相続分がないことの証明書(特別受益証明書又は相続分不存在証明書と呼ばれることもあります)とは、主に不動産の相続登記手続の際に、「自分は生前に、被相続人から相続分以上の財産の贈与を受けたので、相続分はありません」と証明する書類のことをいいます。この書類に署名・押印(実印)の上、印鑑証明書を添付すれば、当該相続人については、遺産分割協議書がなくても、不動産の相続登記手続を行うことができます。
1.相続分がないことの証明書とは
相続分がないことの証明書は、特別受益証明書、相続分不存在証明書、と呼ばれることもあります。いずれも、自分は生前に、被相続人から相続分以上の財産の贈与を受けたので、相続分はありません、と証明する書類のことをいいます。
2.相続分がないことの証明書の記載例
相続分がないことの証明書の記載例は、以下のとおりです。
証明書
私は、生計の資本として、被相続人から相続分を超える財産の贈与を受けておりますので、被相続人の死亡による相続については、受ける相続分のないことを証明します。
令和 年 月 日
被相続人の表示
最後の本籍
氏 名
死亡年月日
相続人の表示
住 所
氏 名 印
3.不動産登記における活用方法
不動産登記においては、遺産分割協議書を作成する代わりに、他の相続人から相続分がないことの証明書を取り付けるケースがあります。
当該書面に署名の上、実印の押印と印鑑証明書の添付を要する点は、遺産分割協議書と同じですが、遺産分割協議書の作成や相続放棄の手続と比較して簡易な書面であるため、利用されることがあります。
4.実際には特別受益がない場合
もっとも、簡易な書面であるがゆえに、遺産を独占したい相続人が、実際には生前贈与がないにもかかわらず、他の相続人から相続分がないことの証明書を取り付けるケースも考えられます。
その場合、後日、相続分がないことの証明書を作成した相続人から、当該書面の有効性が争われるケースも考えられます。実際には生前贈与がない場合に作成された証明書の有効性については、見解が分かれているため、一概に有効か無効かを断定することはできません。
相続分がないことの証明書は、上記のとおり後日争いとなる可能性がある書面であるため、遺産分割協議書を作成する方が望ましいといえるでしょう。