ホーム > 相続Q&A > 遺産分割を禁止することはできますか。
相続のよくあるご質問
遺産分割を禁止することができるか

遺産分割を禁止することはできますか。

遺産分割を禁止することは可能です。 遺産分割を禁止する方法には、①相続人全員の合意による禁止、②被相続人の遺言による禁止、③家庭裁判所の手続きによる禁止、の3つがあります。
遺産分割を禁止できる期間は、5年以内です。更新することは可能ですが、更新する場合の期間も5年以内となります。

1.遺産分割の禁止の可否

遺産分割は、一定の期間、禁止することができます。相続開始後すぐに遺産分割を行うと紛争になる虞がある場合や、一部の相続人が成人になってから分割協議を行いたい場合等に利用されています。

2.遺産分割を禁止する方法

遺産分割を禁止する方法には、次の3つがあります。

①相続人全員の合意による禁止

相続人全員が合意すれば、5年以内の期間に限り、遺産分割を禁止することができます(民法256条1項但書)。また、この期間は更新することができます。ただし、更新できる期間は更新のときから5年以内となります(同条2項但書)。

②遺言による禁止

被相続人が残した遺言に、遺産分割を禁止する旨が定められている場合も遺産分割が禁止されます(民法908条)。

禁止される期間は、遺言で定められた期間です。最長5年であるため、仮に5年を超える期間が記載されている場合は、禁止される期間は5年となります。

もっとも、共同相続人全員の合意があれば、遺産分割を実行することができます。

③家庭裁判所の手続きによる禁止

遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができます(民法907条2項本文)。

家庭裁判所はこの場合において、特別の事由があるときは、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができます(同条3項)。ここでいう特別な事情とは、相続欠格や死後認知の裁判等で相続人の資格に争いがある場合や、相続財産の範囲について争いがあるような場合です。

3.遺産分割を禁止できる期間

いずれの方法においても、遺産分割を禁止できる期間は5年以内です。期間を更新することは可能ですが、更新する場合も更新のときから5年以内となります。

4.遺産分割を禁止した場合の注意点

遺産分割を禁止する場合の注意点は以下のとおりです。

①相続税の申告及び納税は期限内に行う必要がある

遺産分割の禁止と相続税の申告は、別の問題です。相続税の申告及び納税は、相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。

遺産分割が禁止されている場合、一旦法定相続割合で相続税の申告及び納税を行い、遺産分割完了後に、各相続人の確定した相続割合に応じて、相続税の修正申告を行うことになります。

なお、配偶者控除や小規模宅地の特例は、期限までに遺産分割を完了していることが適用の条件となっています。したがって遺産分割が禁止されている場合、原則としてこれらの特例の適用を受けることはできません。

ただし、相続税の申告書の提出期限から3年以内に分割する旨の届出を行い、認められれば特例の適用を受けることができます。また、禁止期間が3年を超える場合は、やむを得ない事由があるものとして、税務署に承認申請を行い、認められた場合は特例の適用を受けることができます。

②不動産がある場合は登記も検討する

相続財産に不動産がある場合、遺産分割が完了するまでの間であっても、相続人の一人から法定相続割合の相続登記を行うことができます。

法定相続割合の相続登記がされた後は、手続上は法定相続分だけ売却するということも可能です。仮に遺産分割が禁止されていたとしても、禁止の効力を買主に主張することはできません。

そのため、必要に応じて分割禁止の登記を行うことも検討するとよいでしょう。

参考条文

民法

(共有物の分割請求)

第二百五十六条 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。

2 前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から五年を超えることができない。

(遺産の分割の協議又は審判等)

第九百七条 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。

2 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。

3 前項本文の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。

(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)

第九百八条 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。

ご利用にあたっての注意事項

● 記載内容には正確を期しておりますが、執筆日以降の法改正等により内容に誤りが生じる場合もございます。当事務所は、本記事の内容の正確性についていかなる保証をもいたしません。万一、本記事のご利用により閲覧者様または第三者に損害が発生した場合においても、当事務所は一切の責任を負いません。
● 本記事の著作権は当事務所に帰属します。テキスト・画像を問わず、SNS等への本記事の無断転載・引用を禁止します。また、本記事の商用利用および訴訟等へ提出する証拠としての利用を禁止します。
● 当事務所は、本記事を予告なしに変更または削除する場合があります。
● 本記事の内容に関するお問い合わせやご質問には応じられません。

遺産相続でお悩みの方へ。
相続問題に強い中部法律事務所の弁護士が、専門家として、
親切・丁寧に対応,相続事件の解決を全力サポートします。