香典や弔慰金は、弔意や慰め、遺族の経済的負担を軽減する趣旨で、喪主や遺族に贈与される金銭等であることから、遺産ではありません。したがって、遺産分割の対象とはなりません。もっとも、相続人全員の合意があれば、香典や弔慰金を考慮して遺産分割を行うことも可能です。
1.香典や弔慰金の性質
香典(こうでん)とは、死んだ者に対する供養の意味合いで霊前に供える金品のことをいいます。また、弔慰金とは、遺族を慰める意味で交付される金銭のことをいいます。いずれも遺族の経済的負担を軽減する趣旨で交付される側面もあります。
香典や弔慰金は、上記性質より、喪主や遺族に対する贈与と考えられています。したがって、香典や弔慰金は、遺産分割の対象となる相続財産には含まれません。
2.香典や弔慰金の取扱い
2-1.葬儀費用が香典や弔慰金の額を上回る場合
葬儀費用が香典や弔慰金の額を上回る場合、例えば葬儀費用が300万円で、香典や弔慰金の額が200万円だったような場合は、香典や弔慰金の趣旨より、全額を葬儀費用に充当することが通常です。
2-2. 葬儀費用が香典や弔慰金の額を下回る場合
一方、葬儀費用が香典や弔慰金の額を下回る場合、例えば葬儀費用が200万円で香典や弔慰金の額が300万円だったような場合は、余った額を誰が取得するか、という問題が生じます。
この点については、葬儀を主宰した者である喪主に対する贈与であるから、喪主が取得するという考え方と、相続人が法定相続分にしたがって取得する、という考え方があります。
3.香典や弔慰金と遺産分割
前述のとおり、香典や弔慰金は相続財産には含まれないため、遺産分割の対象とはなりません。
しかし、相続人全員の合意があれば、遺産分割協議や調停において、香典や弔意金を考慮することもできます。