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相続のよくあるご質問
遺産がいらない場合、どのような手続をとればよいでしょうか

遺産がいらない場合、どのような手続をとればよいでしょうか

遺産がいらない場合には、一般的には次の2つの方法が考えられます。ただし、債務超過の可能性がある場合は、債務の承継を免れるため、相続放棄の申述をすべきといえます。
1.遺産分割協議の中で、自分の取り分をなしとする合意をする方法
2.家庭裁判所に対し、相続放棄の申述をする方法
その他、ご自身の相続分を譲渡したり、放棄することも可能です。

1.遺産分割協議の中で、自分の取り分をなしとする合意をする方法

この方法は、例えば、被相続人(亡くなった人)の長男が遺産を全て相続するような場合に、他の相続人との間でそのような内容の遺産分割協議書を作成し、署名捺印するといった方法です。

ただし、遺産分割協議では、亡くなった方の債務(借金など)についての合意をしたとしても、あくまでも相続人間の内部関係を決めたにすぎず、債権者に対しては合意内容を主張できないため、注意が必要です。

したがって、被相続人に財産もあるが借金もあるケースで、財産について何も取得しない相続人は、遺産分割協議ではなく相続放棄の手続きをとる方が安全といえます。

2.家庭裁判所に対し、相続放棄の申述をする方法

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、家庭裁判所に申述することにより、相続を放棄することができます(民法9151項)。

相続を放棄すると、初めから相続人ではなかったのと同じ扱いを受け、プラスの財産のみならず、マイナスの財産についても相続することはありません。

3.その他の方法(相続分の譲渡または相続分の放棄)

3-1.相続分の譲渡

相続分の譲渡とは、遺産全体に対する共同相続人の有する割合的な持分を譲渡することをいいます。

例えば、夫が死亡し、相続人が妻と子2名のケースで、法定相続分2分の1を有する妻が、その相続分を長男に譲渡した場合、長男は、自身の法定相続分4分の1と、妻から譲渡を受けた相続分2分の1を合計した4分の3の相続分を有することになります。

なお、相続分の譲渡は、プラスの財産のみならず、マイナスの財産も割合的に移転させますが、債権者に対抗することはできないと考えられています。

したがって、相続放棄(民法938条、939条)と異なり、遺産の債務を負担しなければならない場合があります。

また、相続分を譲渡する場合、相続放棄と異なり、期間の制限はなく、その方式も問いません。ただし、実務上は、相続分の譲渡の意思を明確にするため、本人の署名捺印(実印)と印鑑証明書の提出を求められます。

3-2.相続分の放棄

相続分の放棄とは、共同相続人がその相続分を放棄することをいいます。

相続分を放棄する場合、相続放棄と異なり、期間の制限はなく、その方式も問いません。ただし、実務上は、相続分の放棄の意思を明確にするため、本人の署名捺印(実印)と印鑑証明書の提出を求められます。

相続分の放棄をすると、放棄をした者の相続分が他の相続人に対してその相続分に応じて帰属するという考え方が有力です。

なお、相続分の放棄は、相続分の譲渡と同様に、遺産の債務を負担しなければならない場合があるため、債務の有無を十分確認してから行う必要があります。

3-3.相続分の譲渡と相続分の放棄の違い

実務上、相続分の譲渡は、特定の相続人に相続分を譲渡したい(特定の相続人の相続分を増やしたい)場合に、相続分の放棄は、そのような意向がない場合に、用いられることが多いといえます。

参考条文

民法

(相続分の取戻権)

第九百五条 共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。

(相続の承認又は放棄をすべき期間)

第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

(相続の放棄の方式)

第九百三十八条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

(相続の放棄の効力)

第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

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