調停や裁判になっていない交渉段階においては、固定資産税評価額、相続税評価額(路線価)、不動産会社による査定額などを参考に、相続人間で協議の上合意した金額が評価額となります。
相続人間で金額の合意ができない場合、遺産分割調停や審判においては、裁判所が鑑定人(通常は不動産鑑定士)を選任し、選任された鑑定人が不動産の評価を行います。
1.不動産評価の基準時
遺産分割における不動産の評価は、遺産分割をする時を基準に行います。
以下では、実務上よく行われている不動産の評価方法について解説します。
2.固定資産税評価額による方法
固定資産税評価額とは、土地や家屋に対する固定資産税を課税するために、市町村が当該不動産を評価した評価額のことをいいます。この評価額は3年毎に見直されており、公示価格の70%を基準に評価されています。
固定資産税評価額は、個々の不動産に決められているため、実務上広く参照されています。一般的には、前述のとおり時価より低く設定されていますが、不動産会社の査定の際にも参考にされる価格です。
3.路線価による方法
路線価とは、相続税や贈与税を算定するときの基準として用いられる、道路に面する標準的な宅地の1㎡あたりの価額のことをいいます。路線価は、公示価格の80%を目安に定められており、土地の取引において参考とされる価額です。
路線価は毎年8月に国税庁から公表されており、税務署のほか、国税庁のホームページでも閲覧することができます。
なお、路線価は、固定資産税評価と異なり、全ての土地について算定されているわけではありません。特に地方の取引事例の少ない地域の場合、路線価は算定されていません。そのような地域では、固定資産税評価額に一定の倍率をかけて評価する方法(倍率方式)がとられています。
4.不動産会社の査定による方法
不動産会社に、土地や建物の査定をしてもらう方法です。不動産会社は、最近の取引事例や不動産の現況などから、査定価格を算出します。不動産がある地域の複数の不動産業者に査定を依頼することで、不動産の市場価値の概要をより正確に把握することが可能です。