相続放棄は、相続人の一人から手続きが可能です。相続を承認するか、放棄するかは、相続人それぞれが判断して決定することですので、一人から手続きが可能となっています。
なお、限定承認をする場合は、相続人全員からしなければならないと定められています(民法923条)。
1.相続の3つの方法
相続が開始した場合、相続人は次のいずれかの方法を選択することになります。
- ①相続の承認
- ②相続放棄
- ③限定承認
このうち、①の相続の承認は、被相続人の権利義務をすべて承継する方法です。相続を承認する場合は、家庭裁判所の手続等は不要です。
②の相続放棄は、相続の承認とは逆に、被相続人の権利義務をすべて承継しない方法です。被相続人に借金等があり、相続財産が債務超過であるような場合に行われることが通常ですが、財産の多寡とは関係なしに相続放棄をすることができます。例えば、相続財産はプラスだとしても、被相続人と生前疎遠であったため、被相続人の相続に関わりたくない、といった理由でも相続放棄は可能です。
③の限定承認は、相続によって取得した財産の範囲でのみ、被相続人の債務を負担するという方法です。相続財産や相続債務の概要が不明であり、財産が残る場合は承継したいような場合に用いられます。
2.相続放棄の手続
相続放棄は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対し、相続放棄の申述をする方法で行います。相続放棄をすることができるのは、「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内」とされています。
また、相続の承認や放棄は、相続人の一人だけでも行うことが可能です。相続を承認するかどうかは、各相続人の判断によるためです。
3.相続放棄の効果
相続を放棄すると、最初から相続人ではなかったものとみなされるため、相続財産(遺産)は他の相続人に帰属することになります。具体的な相続分の計算においては、相続放棄をした相続人を除いて各相続人の相続分を計算します。
参考条文
民法
(相続の放棄の方式)
第九百三十八条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
(相続の放棄の効力)
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。