相続放棄をすると、放棄をした相続人は、被相続人の権利義務を一切承継しません。
一方、限定承認は、被相続人の権利義務を承継するものの、得た財産の限度においてのみ被相続人の債務等について責任を負うことになります。
1.相続放棄とは
相続放棄とは、被相続人の財産や負債など、一切の権利義務を承継しないことをいいます。相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。
2.限定承認とは
限定承認とは、相続によって取得した財産の範囲でのみ、被相続人の債務を負担するという相続の方法です。相続財産や相続債務の概要が不明であり、差し引きした結果、もし財産が残る場合は承継したいような場合等に行われます。
3.相続放棄と限定承認の違い
3-1.権利義務の承継面
相続放棄をすると、放棄をした相続人は、被相続人の権利義務を一切承継しません。
しかし、限定承認は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保した、相続の承認です(民法922条)。したがって、被相続人の権利義務を承継するものの、得た財産の限度においてのみ債務等について責任を負うことになります。
3-2.手続面
相続放棄は、各相続人が単独で行うことができます。例えば、長男が相続放棄、二男が承認、ということも何ら問題ありません。また、家庭裁判所に対する申述手続も、それほど難しいものではありません。
しかし、限定承認は、相続放棄をした相続人を除いた共同相続人全員で行う必要があります(民法923条)。また、債権者等に対する公告・催告や、相続財産の換価・弁済等の清算手続きを行う必要があることから、手続が煩雑な面があり、一般の方がご自身で行うのは通常困難といえます。
参考条文
民法
(限定承認)
第九百二十二条 相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。
(共同相続人の限定承認)
第九百二十三条 相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。
(相続の放棄の効力)
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。