遺言執行者は、被相続人の遺した遺言の内容を具体的に実現する行為を行う者のことをいいます。例えば、財産目録の作成、相続財産の管理処分、預貯金の解約、受遺者への財産の引き渡し、相続財産の分配や不動産の名義変更等、必要な諸手続を行います。
遺言執行者を選任するメリットは、各種相続手続において、相続人全員ではなく遺言執行者単独で行うことができるケースがあること等が挙げられます。
目次
1.遺言執行者とは
遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権限と責任を有する者のことをいいます(民法1012条1項参照)。
具体的には、遺言の内容を実現するため、財産目録の作成、財産の管理処分、預貯金の解約、受遺者への財産の引き渡し、財産の分配や不動産の名義変更等、必要な諸手続を行います(民法1011条等)。
2.遺言執行者の選任方法
遺言執行者は、遺言によって指定される場合と、申立によって家庭裁判所によって選任される場合があります。
3.遺言執行者になれない人
遺言執行者になれないのは、未成年者と破産者です(民法1009条)。それ以外の人は誰でもなることができますが、一定の専門知識を必要とする場合もあるため、弁護士等の専門家を選任する方が安心といえるでしょう。
4.遺言執行者を選任するメリット
4-1.不利益を受ける相続人の協力なしに手続ができる
遺言の内容によっては、特定の相続人だけが財産をもらい、他の相続人は何ももらえない場合もあります。また、第三者に遺贈するような場合、相続人が遺贈義務者として手続に協力しない可能性も考えられます。
そのような場合、財産を受け取る者を遺言執行者に選任することで、不利益を受ける相続人の協力なしに遺言内容を実現することができます。
4-2.遺言で認知や相続人の廃除を行う場合
遺言で認知や相続人の廃除を行う場合は、遺言執行者の選任が必要とされています。
参考条文
民法
(遺言執行者の指定)
第千六条 遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。
2 遺言執行者の指定の委託を受けた者は、遅滞なく、その指定をして、これを相続人に通知しなければならない。
3 遺言執行者の指定の委託を受けた者がその委託を辞そうとするときは、遅滞なくその旨を相続人に通知しなければならない。
(遺言執行者の欠格事由)
第千九条 未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない。
(遺言執行者の選任)
第千十条 遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、これを選任することができる。
(相続財産の目録の作成)
第千十一条 遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない。
2 遺言執行者は、相続人の請求があるときは、その立会いをもって相続財産の目録を作成し、又は公証人にこれを作成させなければならない。
(遺言執行者の権利義務)
第千十二条 遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
2 第六百四十四条から第六百四十七条まで及び第六百五十条の規定は、遺言執行者について準用する。
(遺言執行者の地位)
第千十五条 遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。