そのような遺言も可能です。
遺贈を受ける側(受遺者)に一定の義務を負担させる遺贈のことを、負担付遺贈といいます(民法1002条)。
負担付遺贈も遺言の一種であるため、遺言者の一方的な意思表示によって効力が生じます。ただし、負担付遺贈の受遺者は、遺贈を放棄することもできるため、このような遺贈を行う場合は、予め受遺者とよく話し合った上で、受遺者の意思や義務の履行にかかる費用を考慮の上、遺贈する額などを決めることが望ましいといえるでしょう。
1.負担付遺贈とは
負担付遺贈とは、前述のとおり、受遺者に一定の義務を負担させる遺贈のことをいいます。
負担付遺贈も遺贈の種類の一つであり、遺言者の一方的な意思表示によって効力が生じるという特徴があります。そのため、受遺者は負担付遺贈を放棄することも可能です。
負担付遺贈を行う場合は、予め受遺者とよく話し合っておくことが望ましいといえるでしょう。
2.負担付遺贈の注意点
2-1.受遺者は、遺贈によって利益を受けた限度でのみ、義務を負います
例えば、障害を持つ子の面倒をみてもらう代わりに、1000万円の財産を遺贈した場合、受遺者は1000万円を上限として、その子の面倒をみる義務を負うことになります。
他には、愛犬が死ぬまでの世話をする代わりに、それに応じた財産を遺贈するケースも考えられます。
遺贈の趣旨を踏まえると、負担付遺贈を行う場合は、負担してもらう義務の履行にかかる費用以上の財産を遺贈する必要があります。
2-2.受遺者が負担を履行しない場合
負担付遺贈を行ったにもかかわらず、受遺者がその義務を履行しないことも考えられます。
そのような場合、相続人は、相当の期間を定めて催告し、それでも義務が履行されない場合には、その期間が経過した後、遺贈の取消しを家庭裁判所に請求することができます。
2-3.受遺者が遺贈を放棄した場合
前述のとおり、負担付遺贈の受遺者は、遺贈を放棄することができます。
その場合、遺言書に別段の意思表示がなければ、負担の利益を受けるべき者は、自ら受遺者となることができます。
例えば、先の例でいうと、障害をもつ子の面倒をみる代わりに1000万円の遺贈をした場合に、受遺者が遺贈を放棄すると、障害をもつ子(負担の利益を受けるべき者)は、1000万円の受遺者となることができます。
参考条文
民法
(負担付遺贈)
第千二条 負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負う。
2 受遺者が遺贈の放棄をしたときは、負担の利益を受けるべき者は、自ら受遺者となることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。