遺言事項とは、遺言書に記載することで法的な効力を有する事項のことをいいます。
遺言事項は、民法その他の法律で法定されており、相続や財産に関する事項(相続分の指定や遺産分割方法の指定など)、身分に関する事項(認知や未成年後見人の指定など)、遺言の執行に関する事項(遺言執行者の指定など)、その他の事項(祭祀主宰者の指定、生命保険受取人の変更など)があります。
遺言事項以外の事項を遺言書に記載した場合、その効力は、法律的には無効です。
しかし、遺言事項以外の事項を遺言書に記載してはいけないわけではありません。そのような記載が、事実上、相続人に対して大きな影響を与えることも少なくありません。
遺言事項以外の事項を遺言書に記載する場合、「付言事項」という形で、記載することが一般的です。
付言事項は、例えば、遺言によって一部の相続人に法定相続分よりも多く財産を遺贈するような場合に、その理由を記載したり、相続人間で争うことのないよう望む旨を記載したりすることが多いです。
1.遺言事項とは
遺言事項とは、遺言書に記載することで法的な効力を有する事項のことをいいます。
遺言事項は、遺言内容を明らかにし、後日の紛争を防止するため、民法その他の法律に規定されています(遺言事項法定主義)。
2.遺言事項の種類
遺言事項には、主に以下のものがあります。
2-1.相続及び財産に関する事項
遺言事項のうち、相続及び財産に関する事項は、主に次のものがあります。
①相続分の指定(民法902条)
②遺産分割方法の指定(民法908条)
③特別受益の持戻しの免除(民法903条3項)
④遺贈(民法964条)
⑤相続させる旨の遺言(民法1014条2項)
⑥信託の設定(信託法3条2項)
2-2.身分に関する事項
遺言事項のうち、身分に関する事項は、主に次のものがあります。
①遺言による認知(民法781条2項)
②未成年後見人、未成年後見監督人の指定(民法839条1項,民法848条)
③推定相続人の廃除・廃除の取消し(民法893条、民法894条)
2-3.遺言の執行に関する事項
遺言事項のうち、遺言の執行に関する事項は次のものがあります。
①遺言執行者の指定・指定の第三者への委託(民法1006条)
2-4.その他の事項
遺言事項のうち、上記以外の事項(その他の事項)は次のものがあります。
①祭祀を主宰すべき者の指定(民法897条1項ただし書き)
②生命保険金の受取人の指定・変更(保険法44条)
3.遺言事項以外のことを遺言に記載した場合の効力
前述のとおり、遺言事項は法律によって規定されていることから、遺言事項以外の事項を遺言書に記載したとしても、法的な効力は有さず、その意味では無効といえます。
法的な効力を有しないとは、当該記載を根拠に裁判でその実現を主張しても、法的には認めてもらえないということです。
しかし、遺言事項以外の事項を遺言書に記載してはいけない、という決まりはありません。また、遺言書は遺言者の最終意思であるため、事実上、相続人に対して大きな影響を与えることも少なくありません。
そこで、遺言事項以外の事項を記載する方法としてよく利用されているのは、「付言事項(ふげんじこう)」といわれる記載です。
付言事項の内容としては、例えば、遺言によって一部の相続人に法定相続分よりも多く財産を遺贈するような場合に、その理由を記載したり、相続人間で争うことのないよう望む旨を記載したりすることが多いです。