遺言を遺すかどうかは、自由です。
しかし遺言がない場合、被相続人の遺産は、民法の規定する法定相続分にしたがって承継されます。一般的には、以下のようなケースにおいては、遺言を遺す必要性が高いように思われます。
①夫婦間に子供がいない場合
②再婚をし、先妻の子と後妻がいる場合
③長男の配偶者に財産を分けてあげたいとき
④内縁の妻(夫)がいる場合
⑤事業を経営している場合や農業をしている場合
⑥特定の財産を特定の相続人に残したい場合
⑦相続人が全くいない場合
以下では、ケースごとに解説します。
目次
1.夫婦間に子供がいない場合
夫婦間に子供がいない場合、兄弟姉妹が相続人となるケースが多くあります。こういったケースでは、遺言がない場合、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1(複数いる場合はさらに頭数で割ります)の法定相続分となります。
一般的には、配偶者に全て相続させたいと考える方が多いため、遺言で「妻(夫)に全て相続させる」とすることにより、配偶者が単独の相続人となることが可能です。また、兄弟姉妹には遺留分がないため、後から遺留分侵害額請求を受ける恐れもありません。
なお、このケースでは、配偶者がそれぞれもう一方の配偶者に残す内容の遺言を遺す(お互いに遺言を遺す)ことで、どちらが先に亡くなった場合でも、配偶者に財産を残すことが可能となります。
2.再婚をし、先妻の子と後妻がいる場合
先妻の子と後妻との間では、一般的に遺産争いが起こる確率も高いため、遺言で財産の承継について明確に定めておく必要性が高いといえます。
3.長男の配偶者に財産を分けてあげたいとき
長男の配偶者が、長男の死後に、長男の両親の世話をしているような場合(長男が、長男の両親よりも先に死亡したケース)、その方に財産を遺すには遺言で定める必要があります。これは、長男の配偶者は、長男の両親の相続人ではないためです。
4.内縁の妻(夫)がいる場合
実質的に夫婦同様の生活実態(内縁関係)があったとしても、戸籍上の婚姻届がない場合には、相続人ではありません。そのため、内縁の妻(夫)に財産を残すには遺言を作成する必要があります。
5 .事業を経営している場合や農業をしている場合
事業を経営している場合や農業をしている場合、その事業等に使われている不動産や設備、あるいは経営上の基礎となっている株式を、複数の相続人に分散させると、事業等の継続が困難となる可能性があります。
そういった事態を避けるためには、遺留分にも配慮した上で、遺言で事業用財産等の承継について決めておく必要があります。
6.特定の財産を特定の相続人に残したい場合
相続人の経済状況などにより、特定の相続人に居住用不動産を残す場合や特定の相続人に生活の資金を残したい場合、遺言で「A不動産は○○に、預貯金は○○に相続させる」といった指定をすることが可能です。
7.相続人が全くいない場合
相続人がいない場合には、特別な事情がない限り、遺産は国庫に帰属します。したがって、これまでお世話になった人に遺贈したい場合や団体などに寄付する場合には、そういった内容の遺言を作成する必要があります。