未成年者であっても、満15歳に達しており、遺言の内容や遺言によって生じる結果を理解できる能力があれば、遺言を作成することができます。その場合に作成する遺言は、自筆証書遺言でも公正証書遺言でも構いません。なお、未成年者が有効に作成した遺言を、親権者等の法定代理人が取り消すことはできません。
1.未成年者と遺言能力
遺言を作成するためには、遺言能力(いごんのうりょく)が必要とされています。遺言能力とは、遺言の内容及びそれによって生じる結果を理解する能力のことをいいます。
民法は、満15歳に達した者は、遺言をすることができると規定しています(民法961条)。ただし、満15歳に達していれば誰でも遺言をすることができるわけではなく、遺言をするときに、前述の遺言能力を有している必要があり(同法963条)、遺言能力のない者がした遺言は、無効です。
したがって、満15歳に達していて、かつ遺言のときに遺言能力を有していれば、未成年者でも遺言をすることができます。
なお、未成年者が作成する遺言の種類は、自筆証書遺言でも公正証書遺言でも構いません。
2.親権者が未成年者の遺言を取り消すことができるか
未成年者が一定の法律行為を行う場合、その法定代理人(親権者等)の同意を得る必要があります(同法5条1項)。そして同意を得ないでした法律行為は、取り消すことができます(同法5条2項)。
これらの規定は、契約などの法律行為によって未成年者が不利益を受ける可能性があることから、一定の法律行為については取り消すことができると定められたものです。
もっとも、遺言の作成は身分行為であり、遺言者の意思を尊重することが重視されることから、親権者等の法定代理人が未成年者の遺言を取り消すことはできません(同法962条)。
参考条文
民法
(遺言能力)
第九百六十一条 十五歳に達した者は、遺言をすることができる。
第九百六十二条 第五条、第九条、第十三条及び第十七条の規定は、遺言については、適用しない。
第九百六十三条 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。