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相続のよくあるご質問
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どのような事由があれば、遺留分を渡さなくてもよいですか?

遺留分は相続人の生活保障等を目的とした制度であるため、遺留分を渡さなくてもよい(遺留分を侵害された相続人から遺留分侵害額請求(令和元年7月1日以前の相続の場合は遺留分減殺請求)を受けない)事由は以下に限定されています。
1.生前の遺留分放棄
2.相続開始後の遺留分放棄又は消滅時効の完成・除斥期間の経過
3.相続欠格
4.相続の廃除
なお、相続欠格と相続の廃除は、代襲相続が生じるため、当該相続人に子がいる場合は子から遺留分請求を受ける可能性があります。

 

遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人の生活保障等を目的とした制度であるため、遺留分を渡さなくてもよい場合は、次の事由に限定されています。なお、遺留分制度がどのような制度なのかについては、「遺留分とは何ですか。わかりやすく教えてください。」をご参照ください。

1.生前の遺留分の放棄

遺留分を有する相続人は、被相続人が生きている間に、家庭裁判所の許可を得て、その遺留分を放棄することができます(民法1049条1項)。

家庭裁判所の許可を条件としているのは、被相続人や他の相続人から放棄を強要される虞や、遺留分を放棄した場合の効果をよく理解していない場合等があるためです。

家庭裁判所は、遺留分の放棄が本人の自由意思によるものか、放棄に合理性はあるか、既に相当な生前贈与等の代償を得ているか、等を総合的に考慮し、許可の判断を行います。

したがって、遺留分放棄許可の申し立てをすれば、簡単に遺留分の放棄が認められるというわけではない点に注意が必要です。

2.相続開始後の遺留分放棄

一方、相続開始後に遺留分を放棄する場合は、生前に放棄する場合と異なり、家庭裁判所の許可は不要です。

なお、遺留分の請求には時効期間や除斥期間があるため、消滅時効が完成して援用された場合や除斥期間が経過した場合、遺留分を放棄した旨の意思表示がなくとも、遺留分を放棄したのと同様の結果となります。

遺留分の時効について詳しくは、「遺留分侵害額請求権の時効はいつまでですか」をご参照ください。

3.相続欠格

相続欠格とは、一定の重大な事由がある場合に、何らの手続きも要せず当然に相続権をはく奪する制度です(民法891条)。もちろん、遺留分の権利も認められません。

例えば、故意に被相続人や他の相続人を殺害し刑に処せられた場合や、詐欺や強迫によって遺言をさせたり、遺言の偽造等を行った場合が該当します。

なお、相続欠格に該当すると、法律上は前述のとおり当然に相続権を失い、何らの手続きも要しませんが、実務上は該当することの証明書が必要となる場合があります。

例えば不動産の相続登記を行う場合、相続欠格者自身が作成した相続欠格に該当することの証明書(実印の押印と印鑑証明書付)が必要となります。

仮に欠格者が任意に証明書を提出しない場合、裁判で相続人の地位を有しないことの判決を得て、当該確定判決の謄本を法務局に提出する必要があります(故意に被相続人等を死亡させ、刑に処せられた場合は刑事裁判の判決書で代用できます)。

4.相続廃除の申し立て

被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができます(民法892条)。

相続欠格との違いは、推定相続人の廃除は、被相続人の請求により家庭裁判所が相続権を剥奪する点にあります。

5.注意点

相続欠格に該当する場合は当然に当該相続人の遺留分を含む相続権が失われ、相続廃除の場合は被相続人側から当該相続人の遺留分を含む相続権を失わせることができます。

ただし、当該相続人に子がいる場合、代襲相続が発生し、子から遺留分侵害額請求(令和元年7月1日以前の相続の場合は遺留分減殺請求)を受ける可能性があります。

参考条文

民法
(遺留分の放棄)
第千四十九条 相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。
2 共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。
(相続人の欠格事由)
第八百九十一条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
(推定相続人の廃除)
第八百九十二条 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

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