遺留分減殺請求権の時効(消滅時効)は、遺留分権利者が相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年とされています。また、相続開始時から10年という期間制限(これは消滅時効ではなく除斥期間と解されています。)もあります。
なお、2019年7月1日以降に相続が発生した場合は、遺留分減殺請求ではなく遺留分侵害額請求となるためご注意ください。
遺留分減殺請求は、生前贈与や遺贈(遺言によって財産を譲渡すること)によって遺留分が侵害された場合に、遺留分を確保するために行う請求です。しかし、遺留分減殺請求には時効があります。
なお、2019年7月1日以降に相続が発生した場合は、遺留分減殺請求ではなく遺留分侵害額請求をすることになります。相続の発生時期により、請求内容が異なりますので注意してください。
遺留分侵害額請求の時効については、「遺留分侵害額請求権の時効はいつまでですか」をご参照ください。
以下、遺留分減殺請求の消滅時効等について解説します。
1.遺留分減殺請求とは
遺留分減殺請求とは、遺留分を有する相続人が、生前贈与や遺贈を受けた相続人等に対して、遺留分を侵害された範囲で返還請求をすることをいいます。
遺留分減殺請求権は、2019年7月1日に改正民法が施行されたことにより、遺留分侵害額請求権に変更されました。これにより、2019年6月30日以前に相続が発生した場合における遺留分侵害に対する請求は遺留分減殺請求権、2019年7月1日以降の場合は遺留分侵害額請求権となります。
2.遺留分減殺請求権の消滅時効期間
遺留分減殺請求権には、消滅時効という制限があります。消滅時効とは、一定の期間が経過すると、請求をしたとしても義務者の時効援用により権利を主張することができなくなるという期間のことです。
遺留分減殺請求権の場合、遺留分権利者が「相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過した時も、同様とする」と定められています。
遺留分減殺請求権を行使する場合、相続の事実や減殺すべき贈与又は遺贈の事実についていつ知ったのか等の争いが生じることを避けるため、相続開始日から1年以内に遺留分減殺請求を内容証明(配達証明付)で送付しておくことが望ましいといえるでしょう。
なお、上記の期間制限のうち、1年間の期間は消滅時効期間ですので、義務者が時効を援用した場合にのみ遺留分減殺請求権が消滅します。一方、10年間の期間は除斥期間と解されているため、義務者の援用等は不要であり、期間経過の事実のみで(義務者の援用なしで)遺留分減殺請求権が消滅します。
3.遺留分侵害額請求権の時効期間との違い
基本的には、遺留分減殺請求権と遺留分侵害額請求権の時効期間及び除斥期間に違いはありません。
ただし、2020年4月1日施行の民法改正により、債権の消滅時効のルールが変更されました。遺留分侵害額請求権は、その行使により債権(金銭の請求権)が発生するため、遺留分侵害額請求権の消滅時効とは別に、発生した債権の消滅時効に注意する必要があります。
例えば、2023年4月1日に相続が開始した場合で、2023年10月1日に遺留分侵害額請求を行ったときは、2023年10月1日から5年間で金銭債権の請求権が消滅時効にかかってしまいます。そのため、遺留分侵害額請求を行った後、速やかに金銭の請求訴訟を起こすなどの方法をとることが必要です。
4.まとめ
遺留分減殺請求は、一般的に複雑な事案が多いため、早い段階から経験豊富な弁護士に相談して対応を検討する必要があります。遺留分の問題は、まずはお気軽に当事務所弁護士にご相談ください。
- 遺留分についてさらに詳しく知りたい方は、「遺留分のよくあるご質問」をご覧ください。
- 遺留分の請求をお考えの方は、名古屋の弁護士法人中部法律事務所の「遺留分の請求(遺留分侵害額請求)」をご覧ください。
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