回答
非嫡出子(ひちゃくしゅつし)とは、法律上の婚姻関係にない(結婚をしていない)男女の間に生まれた子のことをいいます。
非嫡出子の相続分は、平成25年9月5日以降に開始した相続(被相続人の死亡日が平成25年9月5日以降)については、嫡出子と同じです。
解説
1.非嫡出子とは
非嫡出子とは、法律上の婚姻関係にない(結婚をしていない)男女の間に生まれた子のことをいいます。
非嫡出子は、出産の事実より、母親がその子を出産したことは明らかであるため、原則として母親の姓を名乗り、親権も母親がもちます。一方、父親との親子関係は明白ではないため、父親の認知がない限りは、父親との法律上の親子関係は生じません。
2.非嫡出子と認知
前述のとおり、非嫡出子と父との関係は、事実上の親子関係にすぎないものです。しかし、父は認知をすることによって、非嫡出子との関係を法律上の親子関係にすることができます。
認知がされると、父の意思に関わらず、子の出生のときにさかのぼって、父との間に法律上の親子関係が生じます。また、認知を受けることによって、非嫡出子は、父の相続人となることができます。
もっとも、認知を受けた子の姓や親権は、当然には変更されないため、変更を希望する場合は、その手続が別途必要となります。
認知の方法
認知をするための方法は、いくつかあります。まず、父親の側からは、生前に役所に認知届を提出する方法があります。また遺言によって認知をすることも可能です。
一方、非嫡出子の側からは、認知の調停を申し立てることができます。調停によって話し合いがまとまらない場合は、訴えを起こすことも可能です。非嫡出子が未成年者の間は、母親が法定代理人としてそれらの手続を代理することが一般的です。
なお、認知の訴えは、父親が生存中はいつでも可能ですが、父親が死亡した後は、3年間以内に限り、検察官を相手方として提起することが認められています。
3.非嫡出子の相続分
非嫡出子の相続分は、改正前の民法においては、法律上の婚姻関係を尊重する立場等より、嫡出子の2分の1とされていました。
しかし、当該規定は、法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反し違憲無効であるとの最高裁の決定(最決平成25年9月4日)が出たことにより、民法改正(平成25年12月5日成立、同月11日施行)によって削除されました。したがって、平成25年9月5日以降に開始した相続については、嫡出子と非嫡出子の相続分は同じです。
なお、この規定について最高裁は、遅くとも平成13年7月当時において憲法14条1項に違反していたとした上で、本決定の違憲判断は、平成13年7月当時から本決定までの間に開始した他の相続につきなされた遺産分割審判や協議等によって確定的なものとなった法律関係には影響を及ぼさない、としました。
したがって、平成13年7月以降に開始した相続で、かつ法律関係が遺産分割協議等によって確定していない相続については、非嫡出子の法定相続分は嫡出子と同じものとして、遺産分割協議等を行う必要があります。
一方、平成13年7月以降に開始した相続で、既に遺産分割協議や遺産分割調停等によって法律関係が確定的となった相続については、たとえ非嫡出子の相続分が嫡出子の相続分の2分の1であることを前提に協議等がなされていたとしても、それを争うことはできません。
参考条文
民法
(認知の訴え)
第七百八十七条 子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる。ただし、父又は母の死亡の日から三年を経過したときは、この限りでない。
(法定相続分)
第九百条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。