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回答
農地とは、耕作の目的に供される土地のことをいいます(農地法2条1項)。
農地には、現に耕作されている土地のみならず、休耕地や不耕作地などの耕作しようと思えばいつでも耕作できる土地を含みます。また、不動産登記簿上の地目とは関係なく、農地の現況によって、農地か否かが判断されます(現況主義)。
農地を相続するだけであれば、農地法の許可や届出は不要です。ただし、農業委員会への届出は必要となります。
農地を相続したものの、農地法の許可がおりず売却や活用ができない場合もあるため、農地を相続する場合は予め専門家に相談しておくとよいでしょう。
解説
1.農地とは
農地とは、耕作の目的に供される土地のことをいいます(農地法2条1項)。ここで「耕作の目的に供される土地」とは、現に耕作されている土地のみならず、現在耕作されていなくても耕作しようと思えばいつでも耕作できる土地(休耕地や不耕作地等)も含みます。
そのため、ある土地が農地といえるためには、現に耕作されていたり、作物が栽培されていることは必ずしも必要ではありません。
また、ある土地が農地であるかどうかは、不動産登記記録上の地目が田や畑であるかどうかとは関係がありません。あくまで当該土地の客観的な現況から、農地であるかどうかが判断されます。
相続した土地が農地にあたる場合、相続の届出が必要となったり、売却等に農地法の許可等が必要となったりします。そのため、農地にあたるか否かの判断は慎重に行う必要があり、明らかでない場合は管轄の農業委員会に確認することが望ましいといえるでしょう。
2.農地の相続手続
農地を相続した場合、不動産の名義変更に加え、農業委員会への届出が必要となります。
2-1.不動産の名義変更
相続によって不動産を取得した場合は、管轄の法務局に対し、相続登記(名義変更)を行うことが一般的です。相続登記を行わないと、現在の不動産の所有者が判然とせず、不動産を売却したり賃貸したりすることが困難となります。このことは、相続した不動産が農地の場合でも同様です。
なお、農地を相続した場合は、農地法の許可や届出は不要です。しかし、相続人ではない第三者に農地が特定遺贈された場合は、農地法の許可等が必要となり、相続登記(名義変更)の際に当該許可書等が必要となります。
2-2.農業委員会への届出
農地を相続した場合、農業委員会への届出も必要となります。なお、この届出は、農地法の届出とは異なり、農業委員会が農地を適切に管理するためのものです。
届出の期間は、相続を知った時から10か月以内とされています。
3.相続した農地の処分
農地を相続したものの、サラリーマンをしているといった理由で農家を承継しない場合、どうすればよいでしょうか。このような場合に考えられるのは、次のような方法です。
①農地を転用し、宅地や駐車場(雑種地)として売却・活用する
②耕作や管理を委託する
もっとも、農地を相続した後に、所有権を移転したり、使用収益を目的とする権利を設定・移転する法律行為を行うには、農地法の許可が必要となります。すなわち、農地を相続するときには不要だった農地法の許可等の手続が必要となってくるのです。
そのため、相続はしたものの、売却や賃貸ができない、ということも考えられます。以下、順に説明します。
3-1.農地を転用し、宅地や駐車場(雑種地)として売却・活用する
前述のとおり、農地について権利を移転したり、使用収益を目的とする権利を設定・移転する法律行為を行うには、農地法の許可等が必要となります。逆に、そのような法律行為がない権利放棄、真正な登記名義の回復、共有持分権の放棄は、許可等は不要です。
農地法の許可等によって農地を転用できるかどうかは、農地の場所が、①市街化区域内、②市街化調整区域内、③三大都市圏内かどうかによって異なります。具体的な転用の可否や条件は、当該農地を管理する農業委員会に問い合わせることをお勧めします。
3-2.耕作や管理を委託する
農地を転用し、宅地や駐車場(雑種地)として売却・活用することができない場合は、農地の耕作や管理を第三者に委託する方法が考えられます。
3-2-1.農地を放置するデメリット
そもそも、農地を放置した場合、どのようなデメリットが生じうるのでしょうか。
まず、農地を放置しておくと、雑草や害虫が大量に発生し、周辺住民から苦情がくることが想定されます。
また、放置されていたなど、農地として適切に維持管理されていない土地は、将来農家に譲渡するような場合に、耕作に適した土地に回復させるのに時間がかかることも考えら得ます。
さらに、遊休農地に指定された場合、農地として安く設定されていた固定資産税が増額となる可能性があります。
3-2-2.耕作や管理の委託
そこで、農地の耕作や管理を第三者に委託することも考えられます。農地の維持や管理の全てを委託することも可能です。地域のJAのほか、株式会社やNPO法人などに委託することができます。
4.農地と相続税
農地を相続した場合、農地以外の不動産や預貯金と併せて、相続税の課税対象となります。
大まかには、農地を含めた相続財産の総額が基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合、相続税の課税対象となり、申告及び納税が必要となります。
相続税の申告及び納税は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内とされています。農地は政策的な観点から、相続税評価の計算方法が宅地とは異なり、相続税の納税猶予の制度もあるため、相続税がかかりそうな場合は早めに専門家に相談するとよいでしょう。
参考条文
農地法2条1項
(定義)
第二条 この法律で「農地」とは、耕作の目的に供される土地をいい、「採草放牧地」とは、農地以外の土地で、主として耕作又は養畜の事業のための採草又は家畜の放牧の目的に供されるものをいう。