養子の子が養親(被相続人)の代襲相続人となることができるかどうかは、養子の子が生まれた日によって異なります。養親(被相続人)と養子が養子縁組をする前に生まれた子(養子の子)については、養親(被相続人)の相続について代襲相続人とはなりませんが、養子縁組をした後に生まれた子(養子の子)は、代襲相続人となります。
1.代襲相続とは
代襲相続とは、本来相続人となるべき者が、被相続人の死亡以前に既に死亡していた場合や、相続欠格等によって相続資格を剥奪された場合に、その者の直系卑属(子や孫など)が、本来相続人となるべき者に代わってその相続分を相続することをいいます。
被相続人に子が複数いる場合に、たまたま一部の子が被相続人より先に死亡した場合に、相続人の子(被相続人からみれば孫)が相続分を失うのは不公平であるため、このような制度が設けられています。
2.代襲相続が発生する場合
代襲相続が発生するのは、被相続人(養親)の死亡以前に養子が死亡した場合、養子が相続欠格にあたる場合、養子が相続の排除を受けた場合です。養子が相続放棄をした場合は、養子は初めから被相続人(養親)の相続人とはならないため、代襲相続は発生しません。
3.代襲相続人の要件
代襲相続人となることができるのは、被代襲者の直系卑属(子や孫など)です。
そして民法887条2項ただし書は、代襲相続人の要件について、「被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない」と規定しています。つまり、被相続人の子の子(本事例でいえば養子の子)が代襲相続人となるためには、子が被相続人の直系卑属にあたる必要があります。
4.養子縁組の効果
養親と養子は、養子縁組の成立(縁組日)以降、血族間におけるのと同一の親族関係を生じます(民法727条)。つまり、養子縁組をすれば、養親と養子の間には、実の親子と同様の血族関係が生じます(法定血族関係)。そして、養子縁組後に、養子に子が生まれた場合は、養親(被相続人)と養子の子との間に血族関係(直系卑属)が生じます。
5.結論
そのため、養親(被相続人)と養子が養子縁組をする前に生まれた子(養子の子)については、養親(被相続人)の相続について代襲相続人とはならず、養子縁組をした後に生まれた子(養子の子)は、代襲相続人となります。
参考条文
民法
(縁組による親族関係の発生)
第七百二十七条 養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。
(子及びその代襲者等の相続権)
第八百八十七条 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。